2018年5月27日日曜日

上前

ここ最近、”キャッシュレス”の語をしばしば見聞します。
キャッシュレス  【cashless】銀行口座への振り込みやクレジット-カードによる支払いなどのように,現金のやりとりなしで決済がなされること。
加えて、プリペイドカード(Vプリカ,JCB,LINE Pay等)、デビットカード(Visa,JCB等)、電子マネー(nanaco,Suica,WAON等)といった新規格もキャッシュレス決済のツールであり、もう、何が何だかといった様相を呈しています。様々な態様があるわけですが、現金で、或いは銀行口座から事前に入金、支払いと同時に銀行口座から引き落とし、クレジットカードが仲介することによる事後払い、といった分類になるでしょうか。ですから、電子マネーと言っても現金で入金すれば前払い型ですし、クレジットカードで入金すれば事後払い型になります。

PayPalもあくまで決済手段であって、銀行口座からPayPal口座に入金すれば前払い型(米国のみ)で、クレジットカードで入金すれば事後払い型ということです。

飲食店で食事後、或いは、スーパーで商品をカゴに入れた後、”キャッシュレスだからと言ってそのまま店を出てはいけないことは、辛うじて理解できました。

このようなキャッシュレス化は、先日、NHK クローズアップ現代+でも取り上げられていましたし、
現金お断り”で暮らしが激変!? ~追跡・キャッシュレス最前線~
経産省からも
キャッシュレス・ビジョン
というキャッシュレス化を促進する資料が公開されています。

決済のキャッシュレス化が注目される中、それに歩調を合わせるかの如く、国民年金保険料等の社会保障費、自動車税や固定資産税等の地方税、所得税等の国税のクレジットカードや電子マネーによる納付が可能になりつつあります。

ただ、社会保障費や税金のキャッシュレス納付は既に銀行の口座振替制度によって実現されています。最初に口座振替の手続きさえしてしまえば、期日までに必要な納付額を銀行口座に入金しておくだけで後は自動で引き落とされ、納付の手続きが進められていきます。ですから、これまで口座振替以外に選択肢がなかったキャッシュレス納付に、新たな納付方法が現れてきた、というのが実の処でしょう。

口座振替を利用するには、銀行窓口に書類を提出したり、手続き完了までに時間がかかるといった煩わしさはあるものの、それは手続き完了までの話です。完了後の納付に関わる手間は大きく低減されますから、この制度は相当程度利用されているはずです。

では、何故口座振替以外にキャッシュレス納付の手段を増やそうとするのか、ここの部分はよくわかりません。転勤、転職、その他で住所が頻繁に変わる層に向けて、という理由しか思いつきません。単に多様な納付手段を用意して納付者の利便性向上を図る、といった程度の目的なんでしょうか。(実はカード会社や電子マネー運営会社、及び、納付先の事情では、と推測していますが、それはいずれ別エントリで記します。)

さて、口座振替を除くキャッシュレス納付についてです。地方自治体納付分については、クレジットカード取り扱い自治体は拡大しているものの、未だ全国全ての自治体で可能にはなっていないようです。ただ、Yahoo!公金支払いのようなようなインターネットサービスとクレジットカードの組み合わせ、或いは、上記電子マネーやプリペイドカードを使用したコンビニでの納付書払いを含めれば、公金全てのキャッシュレス決済はほぼ実現できているのではないでしょうか。

ここから本題に入りますが、社会保障費や税金をキャッシュレス納付する際において、現金納付やキャッシュレス納付の方法の間で割引率が異なったり、クレジットカード払いでは手数料が課せられる場合もあることに違和感を覚えたわけです。

いくつか例示してみます。


国民年金の保険料

期間をまとめての前納や幾通りかの納付方法があって判り難いので、平成30年度被保険者の1カ月当たりの保険料16,340円で考えます。

          (単位:円)   
1.納付書による現金納付:16,340
2.納付書による電子マネー納付:16,340
(クレジットカードによる電子マネーのチャージで0.5-1.5%のポイント還元あり。)
3.口座振替 毎月納付:16,340

(翌月末の納付期限に前月分保険料を引落し)
4.口座振替 早割:16,290
納付期限より1カ月早く口座振替
=当月保険料を当月末引落し
現金納付には未適用
5.クレジットカード:16,340
(毎月末日に当月分の保険料をカード会社が立替納付。
クレジットカード利用による0.5-1.5%のポイント還元あり。)

2年前納では、393,000円[(16340+16410)*12]が、378,580円(現金納付,クレジットカード納付)、377,350円(口座振替)
でのお支払い)となっています。

つまり、納付額だけを見れば、現金納付でもクレジットカード納付でも額は変わらず、割引優遇されるのは口座振替ということです。クレジットカード利用によるポイント還元も円換算して加味すれば、カード利用は現金納付額から0.5-1.5%の割引が受けられることになり、現金納付より優遇される仕組みになっています。


クレジットカードの決済手数料上乗せ

少し話を外れます。クレジットカード決済に関し、今でも時折衆目を集める話題として”決済手数料上乗せ”があります。

最近では、飲食店や物販店で精算にクレジットカードを使用する際、店側から決済手数料を上乗せ請求されることは少なくなってきたと実感していますが、以前は珍しくありませんでした。個人経営の店だけでなく、そこそこ名の知れたパソコン販売のチェーン店でも経験しています。

物販についは、現在では実店舗での決済手数料請求はほぼなくなってきたのかもしれません。おそらく、クレジットカード決済が至極一般的であるインターネット通販の隆盛によるものです。

飲食店についての現状はよく判りません。以前は、偶々入店した店で”クレジットカードご利用の場合は***%の手数料を申し受けます”などといった掲示を見たものですが。(この理由ではなく)再訪していないので現在の取り扱いについては知りません。ここ最近訪れる飲食店は、元々クレジットカードの非加盟店か、或いは手数料を請求されない店ばかりですから。

クレジットカード利用客への手数料上乗せについては、”クレジットカード”、”手数料”、”上乗せ”、”加算”、”規約違反”といった語で容易に情報を入手できます。ただ、殆どはクレジットカードの総合的な解説サイトです。かつては手数料上乗せ、利用金額の制限、あまつさえ利用拒否といった塩対応をした店の実名告発のようなサイトも目にしましたし、食べログの店舗情報に手数料が必要だったり、利用制限がある旨堂々と記載されていました。最近では、
日テレ・スッキリ、クレジットカード規約違反状態の店を放送か「一定金額以上で使用可にして売上増」とメリット説明
といったサイトも見つかりましたが、手数料上乗せ店の増減は不明です。

このカード加盟店のカード利用者への手数料上乗せ請求は、利用金額や時間帯による利用制限と共に、店がクレジットカード加盟店としてカード会社と契約する際の規約違反に当たります。但し、法律に抵触しているわけではありません。

JCBカードで加盟店規約の第11条2項で、
加盟店は、有効なカードを提示した会員に対して、商品の販売代金ならびにサービス提供代金について手数料等を上乗せする等現金客と異なる代金の請求をすること、およびカードの円滑な使用を妨げる何らの制限をも加えないものとします。また正当な理由なくして信用販売を拒絶し、代金の全額または一部(税金、送料等を含む)に対して直接現金支払いを要求する等、会員に対して差別的取扱いは行わないものとします(下線入れました)
と規定していますし、
三井住友カードでは、加盟店規約第4条(信用販売)1項に、
加盟店は、会員が、カードを提示して、物品の販売、サービスの提供、その他加盟店 の営業に属する取引を求めた場合は、本規約に従い、現金で取引を行う顧客と同様に、 店頭において信用販売を行うものとします(下線入れました)
とあります。

ここで明確にしておくべきことは、カード利用者への手数料上乗せという行為が単に規約違反に当たるということではありません。クレジットカードの利便性にただ乗りした欺瞞行為であるという点が指弾される根本です。

真偽はともかく、一般にクレジットカード決済の店への導入は、集客向上、客単価上昇、現金管理の手間削減といった利点があるとされているようです。

店の選択においてカード利用による優待やポイント還元などのカード取扱店を選好させる仕組みに加え、負担を先送りしようとするヒト本来の心理に基づく、想定以上の消費機会出費の増大を喚起させる効果があるのでしょう。そういった効果の対価として店がカード会社に上納する手数料が設定されているわけです。

カードの利用者は、上記規約を承知しているか否かに依らず、それまでの殆どの店でのカード利用の経験から、現金支払いの場合と同条件でカードの利用ができるつもりでいます。物販店であれば会計の際、カード利用で手数料を請求されれば購入をキャンセルすればいいのですが、飲食店では通常食後に会計しますから手数料を加算してカードで決済するか、現金で支払うかの二択です。手持ちが心細ければカード決済一択となります。或いはスマホで振り込むか...

確かに、飲食店でカード利用額の5%とも言われるカードの手数料率が高率であるのは間違いありません。個々の店で状況は異なるのでしょうが、その手数料分を集客増と客単価上昇でどこまで補えているか興味のある処です。で、実際店側はどう対応するかというと、カードの手数料分を加算した価格に改訂する、カード会社との契約を打ち切る、のいずれかの選択になります。カードの手数料分を加算した価格に値上げして現金支払いの客にもしわ寄せするか、上記カード決済導入による効果を放棄するか、ということです。前者で、割高感を生じ客離れが起きるのか、後者で客離れや客単価の低下を甘受するのかは個々の店の特性や判断という部分に帰結するのでしょう。

では、カード決済者に個別に手数料を請求することが妥当なのかというと、そういう話でもありません。該規約違反は上述のようにカード利用客を誤認に導き規約外の手数料を負担させられますし、規約を遵守している他店との公正な競争を阻害することになりますから。

まぁいずれにせよ、カード会社との規約の下、クレジットカードの利用客は現金支払いの客より優遇されている、言い換えれば現金支払いの客が冷遇されていることには相違ありません。

どうすべきという話に触れるつもりは毛頭なく、あくまで各々の店の経営判断に依るわけですが、合理的で整合性ある説明は求めます。

ちなみに同じ規約違反であっても、”現金支払いの場合には手数料分値引き”とした方が好印象の気がします。ただ、残念ながらこれまでそういった店にお目にかかったことはありません。

ここで話の逸れついでに、上述の飲食店でカード利用額の5%とも言われる手数料率について、カードの機能である決済代金の立替、貸付の視点から考えてみます。(一回払いの場合のみです。)

飲食、物販その他のカード取扱店は、月毎にカードで決済された代金をカード会社から受け取ります。手数料が差し引かれての額であるのは言うまでもありません。一方、カード会社は月毎にカード利用者の銀行口座から一ヶ月間に決済された利用額を引き落とします。

つまり、店でカード決済が行われてカード利用者の銀行口座から利用額が引き落とされるまでの間、カード会社は利用額を立替、貸し付けている形になります。貸付先は本来カードの利用者ですが決済により店に支払われますから利用者の手元に滞留することはありません。この時の手数料が貸付金利に相当するとみなすことができ、その負担は店側が負うと、こんな構図でしょうか。ここでカード会社の貸付期間は1〜2ヶ月でしょうから1.5ヶ月としてみますと1.5ヶ月の融資期間で5%強の利息が生じていることになります。年利に換算すれば...
42%???
俄には信じられない数字です。日銀の市中銀行への貸出がゼロ金利とかマイナス金利とか騒がれている中でこの数字はなんなんでしょうか。暴利以外に受け止めようがない驚きの数字です。


話を戻しつつ次のエントリに続けます。

2018年5月26日土曜日

米朝

米朝会談中止の報道で、ベイチョウカイダンの音を耳にして、桂米朝の怪談話が脳裏を過ったのは自分だけではないはず、と思いたい。

2018年5月18日金曜日

枯渇

電子番組表を見る。コンテンツのあまりの貧弱さにリモコンを持つ手が固まり、番組表をしばし凝視...

クローズアップ現代+も質にムラがありますし。録りためているBS 世界のドキュメントを観終えたら、放送大学を見始めてしまいそうです。

2018年5月12日土曜日

応答2

録音音声による電話アンケートと留守電メーッセージの応答について以前のエントリで記しているのですが、いよいよセールス電話AIとセールス電話拒絶AI、詐欺電話AIと詐欺電話撃退AIのやりとりもその姿が見えてきました。
AIアシスタントが電話で要件を済ませてくれる時代が到来
上記リンクでは、AIがレストランや美容院の予約を、店側の人間と自然な対話で行うGoogleのデモが紹介されています。
店側もAIに置き換わるのも時間の問題です。

その後、電話セールスや詐欺電話へと応用されれば...AI同士の会話が楽しみです。

問題は、AI間のやり取りが高度、合理的になっていくと、もはや日本語や英語といった人間が理解できる言語を介する必要すらなくなってしまうことです。

通信という態様でAI同士のみが理解できる言語?信号で電話セールスや詐欺電話のやり取りを聞いても理解不能です。

自宅のAIが電話セールスAIに言いくるめられ、ある日突然大量の怪しげな健康食品が送りつけられる、或いは、詐欺電話AIに欺かれ口座から勝手に架空口座に振り込んでしまう...AI間のやりとりが不明なままの自動化もちょっとなぁ、と思った今日この頃です。

護符

━━ネットに書いてあった━━
老若男女を問わず耳にする文言です。専門店で店員の説明を否定している場面にも遭遇したことがあります。”ネットに書いてあった”が根拠のようです。

なんだか民主主義社会におけるみんなと同様の護符のようなものなんでしょうか。

で、昨日の衆議院財務金融委員会で、財務省の福田前事務次官のセクハラ問題をめぐる麻生副総理兼財務大臣の発言です。
━━はめられたという可能性は否定できない━━
結局、撤回に至ったわけですが、その際、
━━はめられたというのは、ネットなんかを見てもよく出てくる話だと思うがそのことを申し上げた。発言のタイミングはいかがなものかという指摘を認めるのはやぶさかではない━━
もうその辺りに転がっている
━━ネットに書いてあった━━
と同レベルになっちゃてます。

以前、保育園落ちた、日本死ね騒動の際、”そんな出所不明のネットの書き込みにいちいち取り合わない”といった意の政府側答弁を見聞した覚えがあるのですが...説得力が雲散してしまいました。

この護符がいかに広く浸透しているかを実感した次第です。

当座

時折、墓地/墓石や納骨堂のチラシが新聞に折込まれてきます。墓地/墓石といっても永代供養墓、樹木葬の碑、合同墓が主で継承者がいない、或いは、いたとしても代々継承されることを想定していない一〜ニ代限りの墓です。

NHKが繰り返し現代お墓事情を取り上げ、従前の形式を否定するかの如く、引墓やら単身者の葬儀と納骨を紹介したためかこれまでの所謂墓石需要は激減しているようです。代わって個人、夫婦、せいぜい親子向けの墓地/墓石や納骨堂の販売競争が激化してるかに映ります。

で、こういったチラシを眺めていると、当初は個別に納骨されていても三十三回忌、五十回忌を目処に合同墓というか無縁墓に合祀される、と記載されていることがあります。無縁墓で永代供養...まぁ、次の誰かのために場所を空けるということなんでしょう。継承者がいなかったり、いても継承されないわけですから。

ここで首を傾げてしまうのは、没後33年、50年で果たして当初の契約通りに手続きが進められるのだろうか、と。契約の履行は何によって担保されるのだろう、ということです。今から50年後、業者側、施主側の当事者、関係者が全て故人になっている場合も結構な割合であるような気がします。

まぁ、関係者が誰もいなくなってしまえば供養どころか、合祀も掃除さえもされない、放置状態でも誰も苦情を言えないどころか、その事実すら認識できませんけど。

金銭の授受を行った当事者、関係者が物故した後、事業自体は継承されるのか、引き継いだ事業者は契約を適切に履行するのだろうか、疑問です。金銭面で収入がなくとも契約を履行するという条件で、後の事業者が引き継ぐとか?関係者が物故した契約というものは全くもって諍いの種だなぁ、と感じます。

施主側関係者が早期に物故すれば三十三回忌、五十回忌を待たずとも合祀できてしまいますし、事業者側が物故、若しくは破綻してしまえば以降の手続きの履行責任が不明になってしまうような。更に両者が物故してしまうと...有耶無耶になってもならなくても、なったか否かすら認識できません。そもそも、認識する主体がいませんから。

つまり、関係者が物故する可能性のある長期、超長期に渡る取り決めというものはその確実性に不安要素を排除できない、ということです。認識する主体がいませんから。

つまり、関係者が物故する可能性のあるほど長期、超長期に渡る取り決めというものは、関係者不在という不安要素を常に内包していて実行の確実性に対する疑義を払拭できないということです。

”会社の寿命は30年”、”倒産企業の平均寿命「23年半」”、【会社の寿命】今や"寿命"はわずか5年等、様々な数字が挙げられていますが、上述の三十三回忌、五十回忌前に、事業者側が既に寿命を迎えているということも十分あり得ます。その際、契約の履行が何によって担保されているのか、興味のある処ではあります。

話は逸れますが、このような事業の運営主体は、寺院(宗教法人)だったり一般の民間事業者だったりします。寺院による運営の方が事業の永続性という部分では信頼性に優るかもしれない、という印象です。既に代々、古くは300年、400年と継承されてきた、三十三回忌、五十回忌といった年忌も執り行われてた等、過去の実績を顧みれば、というのが理由です。

戻ります。

長期、超長期の未来など予測できるはずがない、ということに異論はありません。ただ、だからといってそこに既に見えている不安要素から目を逸らすのも適切ではないだろう、とみています。これは責任や負担を将来に先送り、押し付けることによる、責任回避、責任意識の希薄化、楽観です。簡単に言えば、”後は野となれ、山となれ”的姿勢に他なりません。

この部分に、三十三年、五十年という長期に渡る墓地/墓石や納骨堂の話ではありながらも、行き当たりばったりの刹那主義を感じた次第です。

このような”後は野となれ、山となれ”的姿勢や楽観を前提にした長期、超長期の取り決めは社会に少なからずあり、中には物議を醸して訴訟に至ったり、社会問題化した事例も珍しくありません。

思いつくままに挙げてみますと、


マンションの修繕積立金制度

分譲時、割安感を出すために月々の修繕積立金を低額に抑え、老朽化していざ修繕しようとしたら、全く予算不足だった、よく聞く話です。

生命保険

バブル期、いわゆる終身保険の勧誘目的で作成された”絵に描いたモチ”的保険設計書。30年の満期後、払込金総額に対する満期保険金と積立配当金の合計の比は現在では想像できない比率でした。倍率表現が相応しい程で、払込金総額の8〜10倍の受け取り金も当然のように記載されていました。当時、年齢20代後半から30代前半の夫婦世帯で世帯主の死亡保障として7000万〜1億円が必要などとの言説が真しやかにまかり通っていました。確か、一般社団法人生命保険協会によるデータを基にしたパンフレットで、”社団法人”、”協会”の語で権威付け、公正中立性を誤認させる明らかな誇大販促資料でした。その後、10年毎に解約と更新を繰り返すよう誘導したり(悪質な場合、バブル期の高い予定利率の保険を下取りさせてバブル後の低利率の保険との再契約を促したとか...)、営業社員の虚偽告知による不正契約問題が発覚したりして今に至っています。正に、長期、超長期の取り決めにおける、保険会社側の”後は野となれ山となれ。”と契約者の”そんな先のことはわからない。悪いようにはならないだろう。”精神が結実した賜物です。


不動産融資

個人を対象とした不動産融資関連の契約も問題の種は尽きません。バブル期に旧住宅金融公庫が提供していたゆとり返済(ステップ返済)の制度もバブル崩壊やその後の景気後退に伴い多くのローン破綻を生み出しました。賃貸住宅のサブリース契約において、管理会社との契約時に保証された家賃が一方的に減額されたことによる、オーナーのローン破綻や集団訴訟に発展したケースも記憶に新しい事例です。最近ではスマートデイズが仲介したシェアハウス融資に絡むスルガ銀行の不正融資疑惑でしょうか。尤もこちらは詐欺事案かもしれませんが。

これらも契約期間が長期、超長期であることに由来した責任回避や楽観が具現化した事例と捉えても、あながち外れではないと考えています。

数年前からコマーシャルをよく目にするようになった、某銀行が扱うリバースモーゲッジという金融商品があります。換言すれば遺産収奪ローンですが、こちらも紛争の種としての時限装置が作動している気がします。それほど遠くない将来、顕在化するかもしれません。

勿論、民間や公団公社との契約に止まりません。国が関わった取り決めもあります。

緑のオーナー制度

国有林に出資して20〜30年後に成長した木の売却益を分け合う仕組みですが、売却損が出たり売却自体ができなかったりで国相手の訴訟に至りました。関連して先日、
「資産2407億円」実際は99億円 廃止11林業公社:朝日新聞デジタル
といった報道もありました。

最たるものと言えば、絶え間ない不祥事が続く、次のこの制度に他なりません。


年金制度

これまでの不祥事をいちいち例示するつもりはありません。多すぎて...ただ、以前のエントリで記したように、年金受給世代の年金原資として現役世代が原資を供出して支えていく保険方式において、最初の受給者に対する給付完了の見通し、即ち、一つのサイクルが回る目途が全く見えない現在ですら、制度の維持が危ぶまれる状況です。

このような長期、超長期の取り決めにおける、履行の低い信頼性は、まぁ、関係者全員の将来に対する責任意識の希薄化と楽観に由来するものですが、民主主義社会の性との類似性を感じます。

上記事例は全て民主主義の枠組みの中での取り決めですから、単に民主主義の特性がそれらの取り決めに反映されているに過ぎないのかもしれません。

ただやはり、民主主義の輪をかけたタチの悪さには留意しておくべきではないかと。みんなという正体の定まらない空気による決定は、同調圧力という抗い難い力を生み出しつつ、その決定に対するみんなを構成する各々の責任意識は希薄です。その結果は当座の責任を回避し、負担を将来に先送り、押し付けることです。この時”将来”が遠ければ遠いほど責任意識の希薄化が進み、楽観が強まるのは上記事例から明らかです。過去の得体のしれないみんなによる決定が、関係者不在となる後世を束縛して将来世代に苦労を強いる、その繰り返しこそが民主主義社会の歴史ではないかと考えます。

それは解りやすい表現を用いれば”後は野となれ、山となれ”的な刹那主義であり、例えば年金制度の設計不備、アベノミクスにおける日銀の量的金融緩和(財政ファイナンス)と公共事業投資、原発の核廃棄物問題などをその証左として捉えることができます。

一方、過去の意志決定が現在に負担を強いている例も多々挙げられます。前の敗戦は典型です。

広い意味ではくすぶり続けている憲法改正の賛否についての論争も該当するかもしれません。第九条絡みであれば自衛隊の合憲性と集団的自衛権認否が論点です。ここで、自衛のための防衛力であれば持つことを許されるとか、集団的自衛権は合憲であるという閣議決定を容認する解釈の余地が現行憲法に含まれていたわけです。

このような、その時々の政情に合わせて都合よく解釈できる余地を残してしまった、或いは、後世の解釈は起草者の意図に沿ったものか否かが不明瞭にしたことが現在の紛糾の種になっています。難しい話で後付と言われればその通りなんですが、起草の際、自衛、侵略、軍隊の定義を含む防衛と安全保障について想定し論を詰めなかった/詰めれなかったことが現在の事態を招いていると考えます。

取り敢えず起草しておいて面倒な部分、詳細な部分は先送りして後はよろしくと...このような見方ができなくもなく、民主主義による意思決定の特徴が現われているような気がします。

憲法起草時、起草者が思い描いた空の蒼さと、現在の憲法を遵守する側が思い描く空の蒼さが同じであるはずはありませんし、同じであっったとしても同じ蒼に見えるかは別の話です。起草時の空の蒼さを理解しない、顧みないで、強引な解釈で自分達の蒼さと同じであるとすることには、傲慢な姿勢を感じ、違和感を覚えます。

付け加えれば、先般の慰安婦問題日韓合意について、履行する/しないで未だ紛糾が続いています。同じ合意でも日韓各々の立ち位置から眺めた時、見える蒼さが異なっているのかもしれません。本来であれば、認識が共有できるまで交渉を詰めるべきだったと思います。ただ、それではいつまで経っても合意に至らず、場合によっては交渉が決裂しかねません。交渉の成果を国内で誇示するためにも、意図的に曖昧にした内容で両国が合意という形を優先したのが実の処だったのでは、と勘ぐってしまいます。

2018年5月5日土曜日

端末

以前のエントリでAmazon Kindle Fire HD8の修理をしました。

無事復旧できたたものの、これといった用途も思いつかず放置していましたが、カメラを接続したRaspberry Piのモニタとして、及び、sshで接続してコンソールとして使ってみました。

Raspberry PiにはPCかスマホでアクセスしているケースばかりで、Kindleを使用した事例は見つかりませんでした。備忘録として少し記しておきます。

記録、見守り、遠隔監視、防犯用途を想定してRaspberry Pi(ラズパイ)を弄っています。


Raspberry Pi3 + Raspberry Pi Camera V2 + motion + stop-server


の組み合わせから始め、


*Raspberry Pi Camera V2

Raspberry Pi カメラモジュール。
約808万画素カラーCMOSイメージセンサ搭載。

*motion

動体検知機能を持った動画、静止画の撮影アプリケーション。

*stop-server

sshを使うことなくブラウザからラズパイの再起動、電源オフを行うためインストール。

紆余曲折を経て、

Raspberry Pi Zero W + OV5647 Camera Module + RPi-Cam-Web-Interface


の組み合わせに至っています。(下写真はRaspberry Pi Camera V2を接続しています。)


*OV5647 Camera Module


Raspberry Pi Camera V2に較べ圧倒的に安価にも関わらず、イメージセンサは約500万画素の解像度を持ちHD撮影が可能。

*RPi-Cam-Web-Interface

動体検知、動画ストリーミング機能に加え、記憶容量の設定、ブラウザからシステムの再起動、シャットダウン機能も搭載。求めている機能が全て盛り込まれ統合されたアプリケーションです。動作も軽快です。公開されている事例が少なく、動体検知の設定等に不明な部分もあります。

その他motionEyemotionEyeOSWebminmjpg-streamerも試してみましたが、使いやすさはRPi-Cam-Web-Interfaceが抜きん出ていました。

ラズパイにインストールされたカメラアプリケーションが適切に動作してPCのブラウザから
http://[ラズパイのローカルIPアドレス]:8081
か、
http://[ラズパイのローカルIPアドレス]/html/
でアクセスできれば、同様にKindle Fire HD8に標準搭載されたブラウザSilkアクセスできます。Kindle Fire HD8を監視カメラや防犯カメラのポータブルなモニタとして問題なく使用できることを確認しました。

次に、Kindle Fireからsshでラズパイに接続して、kindleでラズパイを弄ろうと目論みました。Amazon.co.jpのAndroidアプリから"ssh"で検索してみると、いくつもの端末アプリがありました。その中からまずvsshを試してみました。単にアイコンが端末らしいという理由です。この選択が失敗でした。

vsshをインストールして上記Raspberry Pi Zero Wに接続してみた処、kindleーラズパイ間で通信はしているようですが、見慣れないメッセージが現れました。


expected key exchange group packet from server
とは??? ”OK”しても下記状態で止まってしまいウンともスンとも入力できません。


該メッセージとvsshで検索すると、vsshのみの問題ではないようでした。何だかよくわかりませんが、PuTTY?、Xming?でも現われているエラーのようです。何ソレ?...

ここで、どう対応したかというと...放置です。PuTTYやXmingで起きた状況を理解し、vsshの話に置き換えて対応するのも大変なんで。(実は検索で得られたPuTTYやXmingでの状態を的確に捉えていればもう少し合理的な対応ができたわけですが。後述します。)

一週間ほどして再度Raspberry Pi Zero Wにvsshで接続するも同じ状況です。当然ですけど。その後、何気にRaspberry Pi3接続してみると...できました。プロンプトが表示されコマンドが入力できます。



sshで接続できるラズパイとできないラズパイがあることが判りました。両者の違いは?、と考えてみると搭載OS Raspbianのバージョンです。Raspberry Pi Zero Wは現行バージョンであるRaspbian Stretch Liteで動作させていますが、Raspberry Pi3は前バージョンのRaspbian Jessieを使っていました。この辺りに起因する問題ではないか、という見当がついたわけです。

再度、先ほどの検索結果から、トップ表示のサイトから一部を引用させて頂くと、
VM 上の X11(Debian) への接続に Xming を使っている。 jessie(stable) への接続は問題なかったのだが、 stretch(testing) への接続でエラーになっていた。 結論として Xming のバージョンアップで解決すると思われるのだが、 とりあえず対症療法で手当てしたのでめもめも。
との記述がありました(文字色は変更しました)。同じ原因なんだろうと推測できます。Amazon.co.jpではvsshの”開発者による最終更新日”は2013/5/7でした。更新が止まっていて、Raspbianの現行バージョンには未対応ということなんでしょう。vsshを選択した際、最終更新日など気にも留めていませんでした。

結局、最終更新日が2018/3/20とあった、
Termius - Telnet and SSH client/shell/terminal
をインストールしてあっさり問題解決に至りました。

今回、異なったバージョンのRaspbianがインストールされたラズパイがあったため、偶々バージョンの差異に依る問題であることが判りました。ただ、上記引用をもう少し丁寧に読み込んでいれば、現行バージョンStretchで生じる問題と気づくことができたかもしれません。

ただ、なかなか気づけず、再度繰り返すだろうなぁ、というのが正直な思いです。