2016年10月25日火曜日

因習(2)

電通で起こった、女性新人社員の自殺事件を受け、会社側は
”月間の時間外労働時間の上限を65時間にする”
”社内全館を午後10時~翌日午前5時、毎日消灯する”
といった対応をを公表しました。ウェブサイトは今日も平常運転です。全く無風で凪状態です。CSRの姿勢は微動だにしておりません。

消灯した図です。午後10時に全館を消灯して社員の退社を促す、とのこと。

で、朝五時には明かりつきまくりと...退社してるんでしょうか。午後10時~翌日午前5時は、消灯下で仕事、社外で仕事、百歩譲って仮眠、といった処かもしれません。正に因習です。

現実的に毎日午後10時~翌日午前5時の間、業務停止など該企業で可能なんでしょうか。少し考えてみます。

該時間帯の業務が必須であるならば、当然翌日、或いは関係会社や外部の委託会社にそのシワ寄せが生まれます。出力を維持するには減じた投入資源を他で補う必要があるわけです。翌日への繰延や外注は通常、利益率を低下させます。では利益率を保とうとすれば、減じた投入資源に見合った出力となり、これは売上の減少を意味します。

営利企業として果たして利益率の低下、売上の減少を容認できるのか、といった話です。経営側、株主がそういった状態に甘んじるとは思えないのですが。過去に過労死があっても、労基署から是正勧告があっても、過重労働が受け継がれてきています。それこそが電通の体質、倫理基準であり因習なわけです。

それでは、毎日午後10時~翌日午前5時の間業務が適正に停止されても尚、これまでの財務状況が維持できたとします。これは即ち生産性の向上にほかなりませんが、これは換言すれば”元々しなくてもいいことを削った”、”穴を掘って埋める仕事をやめた”に過ぎません。

それは、人一人亡くなくならないと実現できない話ではないだろうと。つまり、是正の機会はこれまでも十分あったと考えます。過去の事件の時も、労基署からの是正勧告の際も...

組織の防衛本能、営利企業の飽くなき利益追求姿勢、時には変わらぬ伝統と賞賛される因習の、避け難い剛直性、普遍性に危うさを感じます。諦念せざるを得ないのでしょうか。

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