2015年10月4日日曜日

欧州(2)

さて、脱線からVW排ガス不正問題に戻ります。

特段、自動車に詳しくなく根拠のない所感です。

”クリーンディーゼル”の語を耳にしたのはトヨタのハイブリッド車プリウスが注目されて以降だったかと。プリウスが話題になる中、気がつけばヨーロッパではクリーンディーゼル搭載の自動車が席巻し主流になっていたと。素直にフォルクスワーゲン、メルセデス、BMWにルノーを加えたヨーロッパの自動車会社の技術の凄さには驚きました。

自動車の性能は軽量、高馬力、高トルクで決定され、軽量化、耐久性や信頼性向上には簡素な構造が好ましいのは当然ですから。

ハイブリッドのようにシステムを複雑化することなく、燃費や排ガスといった環境性能に優れた自動車が上市されたわけです。調べてみるとクリーンディーゼルの根幹を支えるコモンレールシステムはボッシュとデンソーから各自動車メーカーに供給されていました。

デンソーのシステムがクリーンディーゼルに採用されているなら、何故日本でディーゼルカーが販売されないのだろうか?作れるはずなのに...


”ああ、そうか。トヨタはハイブリッドカーを売らなきゃいけないからね。莫大な開発費を取り戻して大量生産大量販売でコストダウンを図るにはディーゼルカーは邪魔なんだろう。”
と、納得していました。その一方で、何故ヨーロッパではプリウスは支持されないのだろうか、との疑問を抱いていました。米国で俳優ブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオがプリウスに乗っている、と騒がれた頃だったでしょうか。

ハイブリッドとクリーンディーゼル、性能面で優るのは実の所どちらなのか、何故棲み分けができているのか不思議ではありました。

今にして思えば、トヨタのプリウスを脅威に感じ、自国自動車産業保護を目論んで、ヨーロッパではクリーンディーゼルを盾にハイブリッドを締め出したのではないでしょうか。

一方、産油国になりつつあった米国では安価な軽油を使うディーゼルカーで環境基準をクリアする必要性に乏しいわけです。自国の安価なガソリン車で環境基準を満足すれば十分で、クリーンディーゼルを開発する動機に乏しいと。必要なのは、やはり自国自動車産業保護のため、ディーゼルカーに厳しい環境規制を設けてヨーロッパからのディーゼルカーの進出を食い止めることだったのではないかと憶測しています。

そういった構図が腑に落ちてしまいます。根拠の無い勘ぐりであるのは勿論ですが。


さて、前のエントリでは、一事業者の不正による同業他社の逸失利益について触れましたが、これが賠償された事例を知りません。ただ、本不正事件でヨーロッパの同業他社やトヨタには利益の逸失それなりにあったであろうことは容易に推測できます。

こういった場合の賠償責任というものは法的裏付けが無い限り発生しないのでしょうか。特許制度では権利の侵害が認められれば損害賠償は極めて当然に請求が行われますが...よくわかりません。

で、この排ガス不正問題ですが、どういった形の幕引きになるのでしょうか。

VWの支払い能力の範囲内に収まれば課せられた制裁金も、損害賠償も支払えるはずですが、回収、修理命令が規制当局から出された場合、改修のために代替する技術があるとは思えないのです。

無効化したソフトを常時作動させれば、排ガスは基準値内に抑制できますが、所定の走行性能は満たせなくなります。デンソーのシステムに交換?難しいかと...

結局、最も現実的な落ち着き所として、メーカー、当局が一体となって、
目を逸らして時間による解決を待つ
という対応が想定できるわけです。言い換えれば、徳政令的に猶予、繰延、といった言い方が適切かもしれません。

ヨーロッパでは、時限的に排ガス規制の基準を緩和し、その猶予期間中に基準を満たす技術の開発を進めていくと...規制の先送りです。都合よくルールを変更するのはヨーロッパ諸国の伝統的お家芸です。そういった勘ぐりを否めません。

米国ではどうでしょうか。改修が困難という結論となれば、返品、返金に応じざるを得ないといった状況にも追い込まれかねない話です。

そうなると、排ガス規制の緩い国に転売、投げ売りする他、手段が見当たりません。どの程度の猶予期間が許容されるかは判りませんが、米国からVWのディーゼルカーの姿を消していく、そういった結末をも視野に入れざるを得ない話ではないでしょうか。当然、計り知れない損失がVWに生じます

ただ、少なくとも欧州において、VWはToo Big to Failな存在ですから、ルール変更という鎧に守られて存続するであろうことは確かかと。VWの米国撤退に併せて米国車の欧州からの締め出し、といった保護主義的状態がより顕著になることも予想に難くありません。

このVW排ガス不正の問題において、
EU、2年前にVWの不正把握か 規制運用問われる
と、EUの規制当局は座視していたようです。トヨタが抗議していたにも拘らず、それでも...

欧州の身勝手、独善をまざまざと見せつけられたわけですが、しかし、まぁ、これまでの行状を鑑みればさもありなんと得心が行ってしまいます。

例えば、

『なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』 - 是非とも読んでほしい
といったブログエントリもありますし、独禁法(欧州連合競争法)絡みでは、
マイクロソフトの欧州連合における競争法違反事件
がよく知られています。 2015年でも、
欧州委がGoogleの正式提訴を決定か、競争法違反巡り

欧州委、アマゾン調査 電子書籍巡り独禁法違反の疑い
とEUが自らの正義を主張する事例には事欠きません。

確かに公正な競争の阻害は問題ですが、”不公正”を盾にした保護主義は双方にとって不利益であり、非生産的と考えます。EUという経済共同体を挙げた対外排除は、内なる変革を阻むと共に、周囲、外部の欺瞞、消耗に繋がるということです。

先日、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉について
TPP大筋合意、巨大自由貿易圏誕生へ前進 米議会は懐疑的
といった報道を目にしました。TPP内部での貿易に関わる障壁を低減、撤廃する一方、EUの保護主義への対抗措置としての経済共同体の結成といった見方もできるのではないでしょうか。

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