2015年4月14日火曜日

画餅

年金制度について少し記します。

年金財政が逼迫していく中で、2004年、小泉内閣は”100年安心の年金制度”と銘打って年金制度改正を行いました。連立政権の一翼を担う公明党が主導してのことだったとの覚えがあります。

まぁ、そういった延命措置が講じられながらも、年金債務は増え続け着実に破綻に向かっています。

で、元々、年金制度の設計時点で果たして、負担と受給のサイクルを世代間で継承して持続し得る制度設計だったのか、という疑問が生ずるわけです。

実は制度化当初から定常状態が保持されないまま、ゆっくりとだが、確実に債務が増大していったのではないでしょうか。一サイクル、一人の加入者の納付と受給の期間が長きに渡るため、顕在化してこなかった、若しくは看過してきただけでは...

国民皆年金が制度化された、1961年あたりを起点に考えてみます。1961年に年齢20才で国民年金に加入したとして、全期間(40年)納付したとすると2001年に60才となります。

支給の開始は65才となる2006年からで、2015年現在74才ということになります。平成25年簡易生命表の概況にある、主な年齢の平均余命によれば、75才の男性の平均余命は11.74年、同女性のそれは15.39年です。

従って、国民皆年金制度の下、最初の年金加入者は男性で2026〜2027年に、女性では2030〜2031年辺りに受給が終わるということなります。勿論、平均的な話です。

平均と中間を混同した上で、言い換えれば、2015年現在74才の年金受給者の半数は男性で2026〜2027年、女性で2030〜2031年以降も年金の支給が続くわけです。

国民皆年金制度の下での最初の年金加入者数は約1904千人1961年の20才人口で、同制度下での最初の受給者数は約1733千人2006年の65才人口)となります。

2015年の74才人口は判りませんでしたが、2013年の72才人口は男性約746千人、女性約約854千人で、男女各々の72才生存数79024、89843と74才生存数75542、88131から、
746*(75542/79024)+854*(88131/89843)
1550千人程度と推測できます。
1550/1733=0.894
ですから、国民皆年金制度での最初の受給者のほぼ90%が未だ年金を受給していて、受給者数は漸減していくものの今後も相当長期に渡って支給が続いていくと...

該漸減の割合と、翌年、翌々年...と続く受給者数の増加が全く均衡せず、受給者数は激増していく一方です。

かなり驚愕しています。

特に、国民皆年金制度での最初の受給者のほぼ90%が年金を受給している段階で年金財政の破綻が予測されているわけです。最初の受給者に対する給付完了の見通し、即ち、一つのサイクルが回る目途が全く見えない現在ですら、制度が保たない、ということです。

制度として無理というか、失敗ではないかと...世代間で扶助を承継していくなど正に画餅に等しいとみています

過ちを改むるに憚ること勿れ


といった語が意味するように、国民皆年金を含めた現行の年金制度そのものの検証に手を付けるべきです。

国家的、社会的に重大な事件、事故が発生した時、原因を究明し再発防止策を講ずるのは当然の姿勢です。年金財政の破綻は社会の安全に関わるわけではありませんが、安定には大きな影響を及ぼします。

現行制度に至った背景、理念、設計思想、経緯を遡って省みる必要性を強く感じます。直面する事実と予見される事態に基づいた合理的判断を欠くようでは、日本の統治機構は戦前から相変わらずだなぁとの見方も否定できません。

正にそれこそが古来より連綿と続く我が国組織の本質であるならば致し方ないかもしれませんが...

ところで、ひねくれた視点に立った時この国民皆年金という着想は、ある意味、社会の不安、不満を抑える施策捉えられなくもありません。

国民に福祉国家という理想をぶち上げることで、体制の維持を目論み、大衆迎合に傾いて現在利益(?)をアピールするわけです。勿論、享受する社会保障の皺寄せというか、負担は将来世代に押し付けると...

確信的か否かは判りません。

なんだか、絶滅の危機に瀕しているにも拘わらず、躊躇なく天然鰻を食い尽くす、そういった社会と同根のものを感じてしまいます。

0 件のコメント:

コメントを投稿