2015年4月4日土曜日

非情

特色かどうかは存じませんが、名古屋近郊では、”とんかつ”という食物は極めて身近な存在です。単にとんかつ定食だけでなくカツ丼、カツカレー、カツサンドをも含めれば至る店で口にすることができます。

うどん屋、ラーメン店を軽く凌駕していて供給過剰ではと思わんばかりです。まぁ、それぐらいの親しみ(=需要)があって、とんかつを提供する多彩な店が共存してきたのでしょう。

自宅近辺で、とんかつを前面に出している店だけでも(順不同)

  1. かつ雅
  2. 八千代西店
  3. きらめき亭
  4. 美はる
  5. かつ
  6. かつ久
  7. サカエ食堂
  8. かつ元
  9. 浅井
  10. 八千代分店いそむら
  11. 香竹
  12. マ・メゾン
  13. かつや
  14. かつさと
  15. 必勝
  16. サピド(カツサンド)

と列挙できます。味や価格は様々ですが...加えて、いわゆる定食屋、洋食店、うどん屋、喫茶店にCoCo壱番屋といったカレー屋等、とんかつを扱う店は枚挙に暇がありません。

特にうどん屋と喫茶店は正に伏兵といった存在かと思うわけです。なにせ、カツ丼とミニうどん(きしめん)、若しくはミニカツ丼とうどんというセットがうどん屋のお昼の品書きに堂々と掲げてある土地柄ですから。ラーメン炒飯セットのようなものでしょうか。

更に喫茶店です。カツカレー、カツサンドに留まらずとんかつ定食が人気の喫茶店もあります。喫茶店という業態の定義はさておいてです。味噌カツ定食の旨い店に至ってはもはや喫茶店なのかと...

以上は、外食の場合についてですが、加えて中食、即ち、持ち帰りも含めれば、とんかつを口にするための入手経路には不自由しません。ほぼ無限であるとまで言うのは言い過ぎかもしれませんが。

上記飲食店の何店かもテイクアウトができるのですが、それが本業である、ほっともっと、ほっかほっか亭、ベントマンといった持ち帰りの弁当店も一つの入手チャンネルです。

ただ、スーパーこそが中食の主役でしょう。惣菜コーナーには店内調理されたとんかつ弁当、かつ重、かつサンドが並んでいますし、とんかつ単品として調理済み、或いは冷凍食品の形態での購入もできます。一部のスーパではスーパー自身の調理によるものだけでなく、テナントとして入居している、さぼてん、和幸といったとんかつ、揚げ物に特化した専門店も選択肢として得られます。

で、実は町の肉屋こそがやはり中食の本命かと信じています。一般的ではないかもしれませんが...

そういった状況の中、尾張旭市晴丘の交差点付近で非情な抗争が勃発しているわけです。ストリートビューでは現時点で更新に至っていませんが、如何なものなんだろうかと思われる状態になっています。

片や薄衣を纏い余熱でじっくり火を通したトンカツそのものの旨さを売りにする店と、片やとんかつを中心とした揚げ物の庶民向けチェーン店、両者が広くはない道を隔てて対座しています。

確かに、とんかつのみの旨さで比べれば両者は均衡が保たれるのかもしれません。それでも、上質な豚肉を細かなパン粉で揚げた上品なとんかつの圧勝とはならないでしょう。粗めのパン粉で揚げられた、油と脂を味わうとんかつにも一定程度の支持があるはずですから。勿論、価格を含めての話ですが...

”ザ・とんかつ”として思い描かれるのは後者です。下記エントリも一例かと。
尾張旭のとんかつの美はるさんは、目を見張る? 
更に共存を阻む存在としてカツ丼の存在があります。とんかつ、丼ツユの浸みた衣とご飯、半熟卵が渾然一体となって上品なとんかつの前に立ちはだかるわけです。

とんかつ単品の上品な旨さで対抗し、伍して並び立つのだろうか、今後の動向を注視していきたいところです。

ところで、こういった幅広いチャンネルでとんかつを口にできる環境において、ある特定の店に足を運ばせるには何が動機となるでしょうか。

本末転倒かもしれませんが、実はとんかつ以外の部分に依るのではないかと考えます。とんかつそのものが並み以上の質であることを前提としてです。とんかつを食べて落胆する店には誰も赴きませんから。
――xxへ行ってとんかつを食べようか。あそこはとんかつだけでなく○○も旨いしね。――
この○○の部分、即ちとんかつ以外の部分が重視されるということです。
”とんかつは旨い”
”とんかつだけは旨い”
”とんかつしか旨くない”
ではなかなか難しいかと...

それは味噌カツの味噌ダレ、ソース、キャベツは勿論、カツ丼、豚汁、ポテサラだけでなく、串カツ、ハムカツ、メンチカツ、コロッケ、牛カツ、チキンカツ、レバカツをも含めての話です。どて煮もいいですがちょっと離れすぎかもしれません。

個人的にはエビフライは動機になり難く、旨いカキフライ、更にはアジフライに駆り立てられます。他にも、鰯、鮭、鱸、鯨、メカジキ、鮃、鮎、公魚、イカ、帆立...

魚介や鯨まで話を広げると際限がなくなりますのでこの類はさておきます。
  
話を戻せば、カツ丼はとんかつの味ではなく、丼ツユを含んだ衣で飯を食わせる料理です。ハムカツは庶民的過ぎるのでしょうか。ハムカツ定食を出す飲食店を知りません。

メンチカツ、コロッケが品書きにある店も多くはありません。コロッケは用意があったとしてもクリームコロッケがほとんどです。名古屋近郊でやまがき畜産や三田屋に匹敵するメンチカツ、ビーフコロッケを提供する店に訪問できたことはありません。

牛カツ、チキンカツも提供する店はあるものの少数です。もう少し増えてもいいような気がします。レバカツに至っては皆無に近いかと。”レバカツにするからレバーを薄めに切って”と精肉店で頼んでも通じませんでした。

こういったトンカツ周辺部分に特筆すべきものがある店、即ち、
豚汁の旨いとんかつ屋
ハムカツもあるとんかつ屋
コロッケが人気のとんかつ屋
メンチカツが評判のとんかつ屋
こういった店こそが、否が応でも、とんかつそのものへの期待を押し上げてくれるのではないだろうか、と思う次第です。

ちなみに、これまでで旨かったと印象に残っているとんかつ屋は、川崎市宮前区のとんかつ勝義と秋葉原の1店です。こちらは失念しました。もう二十年以上も前の話です。

勝義はグーグルによれば未だ営業中のようですが当時と同じかはわかりません。

蛇足でした。

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