ただ、そういった中で、生産性の向上に繋がらないどころか、むしろ阻害して逆効果となる事例もあったりします。一例を挙げます。
未だに継続して運用されているかは存じませんが、以前、目標管理制度と称される手法によって評価を受けたことがあります。当時、企業の研究開発部門に所属していました。
該制度は事務系技術系に依らず各部門一律に導入されたようです。各自が年毎に目標を設定、申告し、その目標に対する進捗や達成度で業務の成果が評価されました。
で、この時むしろ生産性を落しかねない力が働いていたような気がします。この制度から受ける非生産的な印象、提出書類作成のための資料収集、会議、面談に費される時間は勿論のことです。
思いつくままに列挙してみます。
1.目標に対する達成率で評価されてしまうわけですから、
達成可能なというか、目処がついたレベルの目標まで
しか設定しなくなります。
極端には次期目標達成を確保するため、成果の出し
惜しみが起こります。2.目標に至る過程で派生した、横道に逸れた成果は、
それが別のテーマで有用であったとしても
軽視されてしまいます。
別方向のチャレンジ目標と称される項目が
設けられていたとしても、あくまで設定した
主テーマの目標に対する達成率が優先されます。
3.目標を達成した成果の質的評価には客観性、絶対性を
おそらく備えられないため、評価は報告書、特許、論文
といった成果書類の件数に大きく支配されます。
4.通常、成果の評価者は所属部署の管理職となります。
該管理職は部署内、或いは関連部署の出身であることが
殆どです。原則として内部昇格者による
階層型組織が形成されているわけです。
この時、評価者として適正な能力が培われているか
疑問符がつく場合が少なくありません。
研究部門では、研究者としては優秀だが...
という例は珍しくありませんでした。
自らが功績を上げる能力と、他の成果を評価する能力は
相関しない気がします。
その他、当事者の責に帰さない朝令暮改による目標、計画の変更、修正、中止等の事態に遭遇すると、非生産性はより強まります。
いずれにせよ、特に創造と判断が主たる業務において、生産性の評価という作業は極めて困難です。部門横断的であり、且、各部門に適切に最適化された生産性評価システムなど一朝一夕に構築できるものではないと考えます。
そういった難しさを考慮しないままの不十分な制度設計では、結局、体面的、形式的な運用になり、該制度が却って生産性向上の弊害になってしまいます。
続けます。
かつて民主党が与党だった当時、盛んに喧伝されたマニュフェストじゃあるまいし、己の職務と資質を予断なく鑑みれば、安易に大風呂敷を広げて自縄自縛に陥ってしまう事態は極当然に予測できるのではないでしょうか。
ただ、だからと言って生産性向上に無関心であっていいわけではありません。生産性向上を図るにはどういった方策がとり得るかを考えてみます。
続けます。
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