2014年2月21日金曜日

方策(2)

全ての業務に適用可能ではありませんが、意図的な投入資源削減も一つの方策ではないでしょうか。勿論、生産される価値の目標は固定したままです。

以前、トヨタの生産現場で導入されていると、見聞した覚えがあります。


投入資源(人、時間、設備、原材料、ユーティリティ)を現状より削減して、削減前と同価値の生産物が得られるならば、見掛けの生産性は向上したことになります。この時何らかの創意工夫による改善が生産プロセスに加えられているはずです。

例えば、投入する人的資源を削減した時、時間、設備といった他の資源を増強すれば削減分を補うことができます。簡単には、残りの人員が残業や休日出勤で減少分を穴埋めするということです。この時点では当然、生産性に変化はありません。

その後この状況、即ち、個々の人員に加わった時間的負荷の増大が、例えば、生産プロセスの最適化、設備の改良(設備投資ではなく)によって軽減されれば生産性は向上したことになります。

時間的資源に関しても同様です。生産プロセスを変更することなく、より短期間で同一価値の生産物を得るには、人的資源の追加等、投入資源の増強が必要となります。生産性の向上には、生産物の価値を保ったまま、該投入資源の増大が抑制されなければならないわけです。


常套的には合理化の名目でムダ、即ち、優先度が低く、管理が容易な投入資源の過剰分、余剰分が削減されます。場合によっては、生産性向上の端緒を見出すため、生産に必須な資源であっても投入を絞ります。

素材製造のような装置産業と家電製造に代表される組み立て産業といった、業種による優先度の差は勿論ありますが、通常、投入資源量の柔軟な管理が可能であり、即応性が高い人、及び/或は時間が選択されます。設備については小さな改善は絶え間なく加えられるものの、大規模な設備投資は、乾いた雑巾を更に絞り切った後の検討項目です。

一般的な実現手段を挙げるとすれば、例えば、IT技術を活用した生産プロセスのネットワーク化多能工の養成、ロボットの導入による省力化と自動化、といったところでしょうか。

こういった手段を駆使して投入資源の無駄が排除され続けます。併せて、生産プロセス全体、及び、該プロセス構成する個々の単位プロセスの改善による、ボトルネックの解消、規格化、簡素化、共通化生産性向上が図られていくわけです。

更なる生産性向上には、生産地域の選定も含めた上記大規模な設備投資や従来技術の延長にはない新規生産プロセスの開発が必要とされます。又、既存製品からより高性能、高機能を有する新製品への生産品目の置き換えも、高付加価値の製品を生産するという意味で、生産性が向上したと捉えることができます。

この辺りから技術開発部門、研究部門の領域となっていきます。生産工程を短縮させる反応収率を向上させる触媒、環境負荷の低減、副生成物の再利用に関わる技術開発や、小型軽量、高強度、高耐熱性、高精細、高信頼性、高耐久性といった高効率、高性能を有する新規製品の研究開発です。

以前も触れましたがこういった部門での生産性向上をどう推進するかは、生産物、即ち、業務による成果の定性的評価の面から、難しいものがあります。人的資源による創造と判断が生産物の根幹部分であるためです。

上記と同様に人的資源を削減しても尚、アウトプットの価値が保たれていれば良ですが...人材が最も重視されるべき業務分野において、生産性向上のために人的資源を削減することが採るべき選択とも思えません。

効果を期待するならば、管理部門の縮小、管理職の削減による組織の簡素化でしょうか。業務の核心部分ではなく、周辺部分を削ぎ落すわけです。創造と判断が主たる業務部門において、いわゆるプレイングマネージャーならともかく、部署や部門の管理が該部門の生産性向上に大きく寄与するとは思えません。

”管理”が創造と判断による付加価値を生み出すわけではありません。勿論生産の方向性を秩序付ける役割があるのは事実です。しかしながら、階層的な組織構造が屋上屋を架す結果を招き効率を損ねてしまう多くの事例を目の当りにしてきました。

随所に評論家、批評家を発生させてしまう組織構造では、会議や打ち合わせが蔓延し、生産性向上など望むべくもありません。

 ”新規”、急務目標成果独創達成と笛を吹いたからといって上手に踊れるわけではありません。創造と判断を根幹とする業務の生産性向上には管理、統制の排除が有効な策であると考えます。


続けます。

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