2013年10月29日火曜日

連鎖

全ての責を母親のみに負わせ難い、自身の生い立ちに引きずられた抗えない力を感じてしまいます。

杉山春「ルポ虐待——大阪二児置き去り死事件」
【読書感想】ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件

ノンフィクションとして
”永山則夫 封印された鑑定記録”
(堀川 惠子 岩波書店 2013年)
と照らせば強い類似性を感じます。

本来、親の養育によって形成される子の人格(気質、性格、個性)には、親世代自ら生育履歴そのものは反映されないと信じていますし、信じたいと思っています。

しかしながら、
 ――親自身の幼少時の生育環境が自分の子の養育に
及ぼすことを排除し得ない――
上記事例は、そういった疑問を想起させます。

例えば、”虐待”、”連鎖”といった語で検索してみると、何件もの相談、告白があり、又、公的機関からの情報、報告も見つかりました。

「虐待かな?」と思ったら・・・。 東京都福祉保健局
児童虐待における世代間連鎖の問題と援助的介入の方略:. 発達臨床心理学的視点から(久保田まり 季刊社会保障研究 Vol.45 No.4 2010 国立社会保障・人口問題研究所
(木本, 美際, 岡本, 祐子 広島大学心理学研究 : Hiroshima Psychological Research no.7 page.207-225 (20080331))

これまでなんとなく伝え聞いてはいたのですが、実は広く認知されている問題のようです。ただ、これまで断ち切られることなく続いてきたであろう負の継承にも拘らず、公に周知されるようになったのは上記資料の公開年次を見ればここ十年以内でしょうか。 

そういった中、”封印された鑑定記録”は、公的な資料ではないものの、過去の具体的事実公開された、赤裸々な記録
す。 


幼少時に植え付けられた自己に対する周囲(=保護者)からの拒絶、嫌悪、敵意を自らの意識としてしまい、それが踏襲されてしまうのでしょう。

残念ながら私には論じるための知見もなく、いかんともし難い無力感を抱くのみです。己の責に依らない、避け得ない見えざる力に恐れさえ感じてしまいます。


虐待に関する事件の衝撃、悲痛さを過大に捉え、問題の本質を一律に論じたり、目を逸らす、覆い隠したりすることは避けるべきです。更なる統計的、客観的調査と論理的検証を進めることが必要かと考えます。

こういった作業を基にした、被虐体験を持つ親の深層に潜む自らの子に対する虐待の動機が明らかにされ、その対処法が見出されることを強く願います。

いずれにせよ、こういった問題に纏わる事件が引きも切らず報道され、明確な処方箋がないまま未だ根絶に至っていない、そういった社会は果して賢い社会なのでしょうか。

科学技術の急速な進歩に見合う程、果して社会は賢くなってきたのだろうか、疑念を抱いています。この問題も疑念の根拠の一つです。

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